「残すに値する未来をつくるために 」湯澤幸子 会長挨拶

「残すに値する未来をつくるために」

公益社団法人商業施設技術団体連合会
会 長  湯 澤 幸 子

withコロナ時代の日常生活の変化を的確に捉え、残すに値する未来をつくるために、私たちは今何ができるのか、真剣に向き合うことが求められています。

コロナ禍での日常生活での変化とは、人間の心理において閉鎖された空間から外部への移動を求めます。その時、適度な距離を保ち、できるだけ最小の交流で用をすませるようにします。感染予防のため非接触での工夫する技術革新が進み、モノやコトが動き、人は自律した行動を求められる社会へと移行するといわれています。

これまで、商業施設は、人と人、人とモノ、人とコトが直接触れ合う社会交流の牽引役として、街に賑わいを生み出し、経済を活性化し、文化価値を創ってきました。
しかし、withコロナ時代では、密な空間を前提とした従来の手法を見直す必要があります。社会全体に価値観の変容が起き、施設のあり方自体が問われています。密な空間の価値が大きく揺さぶられ、飲食、店舗の立地基準、営業形態が変化しています。
現在の私たちの生活は、グローバルな経済活動の恩恵に依存していますが、地球環境に重大な負荷かけている事実を自覚し、今、生活変容しなければ、そう永くは持続出来ないでしょう。持続可能なエネルギー循環をうながす倫理的消費活動力に基づく都市基盤となる施設づくりに、公益社団法人として積極的に関わっていく必要があります。

変化する時代にあっては、課題解決に導く判断力と技術力を身につけた人材が必要とされます。
従来の既成観念にとらわれることなく、真摯に、持続可能な商い方を探求しなければなりません。
皮肉にもコロナ禍によって、従来の生活や働き方の習慣を見直す機会がもたらされました。既存の制度は、人が幸せに生きるためというよりは、経済的な合理性によってつくられてきたのかもしれません。今こそ持続可能な、ガイア(地球)との共生の道を探るチャンスではないでしょうか。法制度を見直すことによって、都市においては、オープンエアーな空間を広く一般開放することが可能になります。店舗が、広場や公園、道路などの外部スペースへ滲み出て来て、インテリアとランドスケープが一体化していく現象が起きるでしょう。
心地の良い風が吹き抜ける穏やかな空間で、長閑に商う情景は、以前なら、イメージすら出来ませんでした。
しかし、本来の商いは、ストレスとは無縁の人間的な営みから自然発生してきたはずです。当連合会が主催する「主張するみせ」学生コンペでは、自由で柔軟な商いのアイデアが毎年、提案されています。アイデアが実現する未来は、すぐそこまで来ていると信じています。

地球上で生きる全ての人類に、残すに値する未来を探求する責任があります。私たち公益社団法人商業施設技術団体連合会は、困難の中にあっても、次代を担うリーダーを育成する事業を基軸に、広く開かれた公益社団法人として、社会に必要とされ、共感される事業を持続していきます。

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